[]書評「オタク成金」(その2)

オタク成金 (アフタヌーン新書)オタク成金 (アフタヌーン新書)
著者:あかほり さとる
販売元:講談社
発売日:2009-05
おすすめ度:2.5
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おととい書いた「オタク成金」の続きです。
今日は、第4章について思ったことを書きます。この章については、かなり見解が異なります。

「今のままだとこの業界(オタク業界のこと)、なくなっちゃうかもしれないんだよね−・・・」 (P158)

あかほりさんお得意の、人を不安にさせ話に引き込むこの言葉。
いやな感じもしますが、でも真をついていると思います。
僕は、業界の外から眺めているだけです。
なくなるかどうかまではわからないですが、しかし、この業界、今変化の真っ最中というふうに見えます。
発展する方向なのか、そうでないのか、混沌として見えません。

ある意味それを客観的に計るには、やはり統計が欲しいところなのですが、実は統計が入手できていません。業界全体でちゃんとした統計って取っているの? そんな不安もあります。

今手元にある唯一の数字は、この本に載っている数字のみ。
アニメビジネスがわかるアニメビジネスがわかる
著者:増田 弘道
販売元:NTT出版
発売日:2007-07
おすすめ度:4.0
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この本には、2000年〜2005年のアニメ産業の実績数値が不完全ながらも収集されていますが、それを見る限り、2005年まではアニメ産業は拡大をしていたと思われます。


デジタルコンテンツ白書(2008)デジタルコンテンツ白書(2008)
著者:財団法人デジタルコンテンツ協会
販売元:財団法人デジタルコンテンツ協会
発売日:2008-09-02
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後日、この本で確認しようとは思っていますが、僕はアニメ産業は2007年までは拡大していたと考えています。2008年はまだ統計でていませんが、どうだったのでしょう。横ばい?ぐらいじゃないかな? 2009年はこのままだと減少に転じてもおかしくはありません。でも、2009年はどの産業も縮小しているし、それをもって危機!というのは短絡的と思うわけです。

あかほりさん自身は、自分の原点に立ち返って危機を乗り越えたから、この4章でも同じスタンスでモノを言っています。
ラノベは、誰でも読めるものだったのに設定に凝って難しくなっているとか、SF化がすすんでいるのは問題だとか、ミステリの新本格化が問題とか言っているわけですね。原点に立ち返りキャラ(萌え)ベースの軽いノベルに戻らないと先がないというわけです。

そういった事象が起こっているのは間違いないでしょう。あかほりさんのいう通り、軽くモノを書くという方法論を否定するつもりもありません。
僕の見解の違いは、あかほりさんが問題だと指摘したラノベ業界の変化を、僕は自然なことだと肯定的に捉えていることです。

僕の意見は市場論(マーケッティング)に基づきます。あかほりさんも同じく市場論に基づいていると思うのですが、市場の見方が全く違うようです。あかほりさんは、これまで本を読まなかった層に読んでもらうようにするため、もっと分かりやすいものを!と説いているわけです。

「まずね、今の御時世、誰が本を読むのかってことをもう一回考えたほうがいい。初めにも言ったけど、四〇人のクラスのうち本を読むヤツなんて五人。五人しかいない人間を、また取り合ってもしょうがないだろうと。取り合うなら、残りの三五人にしろよ。(後略)」(P186)

上に引用したあかほりさんの言葉は心を打ちます。作者として身をたてようという人には特にそうでしょう。でも僕は業界の外にいる単なる傍観者だから、こんな冷酷なことを平気で言えたりするのです。

「しかし実際に起こっているのは、その五人を奪い合う現象にみえる」
「本を読まなくなってきているのは、社会全体の変化に起因しているので、単に提供する作品をそれに合わせたからといって変化するものではないと考えるのが妥当だ」

日本の将来を憂い、十年以上をかけて教育そのものから取り組み直すという課題を考えるのならば、如何に本を読ませるようにするかという議論はとても面白いと思います。でも、今この業界で生きている作者さんたちは、そんな悠長なことでいいのでしょうか?

統計がないのでなんともいえないのですが、どうも2008年は転換点なのかもしれません。比較的順調に拡大してきたラノベ(萌え)業界は、今飽和を迎えつつあり、そういった中で繰り広げられるのは、限られたパイを奪い合う「ゼロサムゲーム」なのじゃないでしょうか。
だから、作家さんたちは自分の居場所に息苦しさを感じ、そして違うジャンルへ少しずつ活動の場を広げようとしている。SF化がすすんでいるのも、ミステリの新本格化がすすんでいるのも、その他の取り組みも、息苦しい状況が少しでも楽になるようにするためのさまざまなチャレンジなのではないか、僕はそう感じています。
だから、この動きを否定的に捉えられないのです。

すいぶんと長くなりましたが、まだ結論を書けていません。まあ、どうせこのブログは読む人ほとんどいないので、また結論を持ち越してしまおうと思います。
次回で終わるつもりです。あまり長いとほとんどゼロな読者が、完全にゼロになっちゃいますし(笑)

次回は、「イノベーションの普及」という本の内容を適用できないかという話を書こうと思っています。本当はこの回に書きたかったのだけど、いきつかなかった・・・
それでは寝ます。おやすみなさい。