[]書評「銀世界と風の少女」


銀世界と風の少女 (一迅社文庫 ま 1-1)銀世界と風の少女 (一迅社文庫 ま 1-1)
著者:松山 剛
販売元:一迅社
発売日:2008-12-20
おすすめ度:4.0
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銀色の大砂漠が広がる世界。
異常進化した巨大生物と、無数の地雷から交易キャラバンを守るのが、マタドールの仕事。この作品はそんなマタドールたちの物語です。

主要な登場人物が、13人。それを押さえていないとストーリーが頭に入ってこない設定の難しさがあります。

セルバンテス
・ソレイユ・ウィンダム
・ディクテイト・セルバンテス
・ロメロ・ジルベルト
・サラ・ヴィクトール
・フェルナンド・ミディアム
・ラーシャ・バレンシア
リングヴァルト団
バスケス・リングヴァルト
・トートミー・レブンダート
・アドリア・バール
クレセント王立護衛団
・イヴ・クレセント
王室
・マリーガーデンズ・ルースライン
ゼクス・ルースライン
蟹の一族関係
・パンドラ

ちょっとした端役まで含めると、この倍はいるんじゃないでしょうか。

ストーリーの前半は、これらの登場人物が次から次へと、いわば顔見世興行のようにでてきます。また、この作品の世界についての説明も加わり、ちょっと頭がパンクしそうになりました。

逆に、こういった綿密で複雑な設定を好む人にとっては、とても面白いんじゃないでしょうか。
人物も世界も、きっちりと構成されています。
ちょっとこの作者の略歴を追ってみたのだけど、ライトノベル作家になる前は法律を勉強していたのだそう。
うん、それはよくわかります。

この作品の世界は、「きっちり」と整合性がとれています。
これだけ複雑な世界観を持ちつつ、これだけたくさんの登場人物を扱いつつ、しかし銀世界を流れる雰囲気は壊していない。
それはすごいことだと思います。この作者は、綿密なプロットに基づく綿密なストーリー展開を得意とするんだ・・・

ただ、300ページ強の作品にこれを盛り込むと、ちょっと消化不良にもなるかな。そういった意味では、ちょっと欲張りすぎたかもしれないなと思ったりもします。もう少し登場人物を絞って、銀の大砂漠との戦いに焦点をあててもよかったかもしれません。

作品を流れる世界感は、どこかしら「デューン」にも似て、壮大なスペースオペラのような雰囲気をも漂わせているだけに、ちょっと辛口ですが作者に対する激励の意味も込めて、「もうちょっとひとひねりを」とお伝えしたく思います。