[]書評「読書の時間よ、芝村くん!2」

読書の時間よ、芝村くん!〈2〉 (一迅社文庫)読書の時間よ、芝村くん!〈2〉 (一迅社文庫)
著者:西村 悠
販売元:一迅社
発売日:2009-07-18
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この作品にでてくる物語は2つ。
ロミオとジュリエット」と「夏の夜の夢」、シェイクスピアです。

ストーリーの冒頭は「ロミオとジュリエット」の舞台ヴェローナでの話です。
ああヴェローナ! ローマ時代のアレーナ(円形競技場)が現存していてて、夏に野外オペラやってて、一度行ってみたいなあと願っていました。ちょうど今ぐらいなんですよね〜 こんな感じなんです。ね! 雰囲気いいでしょ?

最近、感想を書くようになって、自分がどんな読み方をしているのか、自分で観察するようになってきました。さきほどのしょうもない話におつきあいいただき申し訳なく思いますが、なにかのキーワードが、自分の好きななにかに結びつき、トリップしてしまうことが時々あります。この作品は、まずヴェローナでした。
そんなふうになったとき、その後、僕はその作品を一挙に読んでしまうみたいです。

さて、「ロミオとジュリエット」の話は、このストーリーの伏線となっています。
そして、いよいよこの作品の本題に・・・

この作品の本題は、読書をすることの意味。
1巻目のあとがきに作者はこう書いています。
「少なくとも僕は物語に没頭することで、現実を遠ざけていました」

なぜ、ヒロインの春奈は、周りとの関係を避け、本の世界に閉じこもるようになったか。
なぜ、主人公の和樹は、物語を否定し、憎むようになったか。
そう、この2つは相反するように見えるのですが、実は同じものです。
作者は、自分のこれまでの経験を掘り下げて、物語と現実の折り合いの付け方、何を読書から学び、どう大人になっていくかということを、読者に感じてほしいのです。
そして、もうひとりの夏耶は、自分の願いがかなえられない事を悟りつつ、折り合いをつけていく、「がまん」を象徴しているのでしょう。
つらいことを乗り切るためにどうしても身につける必要のある態度です。
そんな3人が、ドタバタしながら少しずつ成長する物語、これがこの作品なのだといえます。

さて、そんな三人三様な思い、悩みを明らかにした上で、舞台はまた本の中へ。
今度は、「夏の夜の夢」です。
あれ? 少年少女版で「夏の夜の夢」わりと何回も読んだはずなのに思い出さないぞ!

でもね。あまりそのあたりの知識は必要ないようです。ちゃんと説明してくれますから。そして、お約束の「裸の女性」が二人も登場します!
いやあ、なかなかエロい。(そんなふうにだっこすると、おけけもばっちり見えるはず!)
うほ!
そして、和樹と○○(ヒロインのどっちか)は、裸で抱き合いながら、ある自分たちの悩みに少し決着をつけていきます。
(でも、一迅社文庫なので、当然寸止めです。それに直接なエロ語はご法度ですし)

うん、シリアスなだけでなく、エロもあって、一挙に読めるのですよね。面白いというより、ちょっとなにかを考えさせられた。そんな感じです。

でも、ほんのちょっとだけ不満も残りました。
そう、それはぼくの好みの問題なのですが。
エロは最後までつきぬけて明るい方がいいなあ・・・
(ちょっと不完全燃焼)