(ティアラ文庫)「魔王子の花嫁」感想

魔王子の花嫁 (ティアラ文庫)魔王子の花嫁 (ティアラ文庫)
著者:七海 ユウリ
販売元:フランス書院
発売日:2009-06-03
おすすめ度:3.0
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主人公(ヒロイン)のラズシエルは、エルファーン王国の第二王女。
でも、王宮の毎日の生活に退屈しています。そんな時、目の前に現れたのが、魔族の王子ルーク。ルークはいきなりラズシエルにキスしようとしますが、それはラズシエルを第一王女、ミネルヴァと間違ったからでした。
というのも、ルークは、魔王である父イシュルスと、ミネルヴァやラズシエルの父、エルファーン王国の国王とのルークとミネルヴァを娶らすとの約束を果たしにやってきたからです。

さて、冒頭から波乱の展開となっていますが、実はこのお相手役の男キャラ、魔王子のルークは、正直言って愚か者です。
仮にも王子たるもの、将来、魔国を統治せねばならんのでしたら、使命として与えられたミネルヴァとの結婚のため、粘り強くがんばらなきゃならないと思うのです。たとえそれが政略結婚だとしてもです。
でも、ルークはミネルヴァのつれない態度というか、冷たいあしらいに早々にあきらめてしまい、あげくのはては、主人公(ヒロイン)のラズシエルに花を毎日贈ってしまいます。
なにやってんだか。
王子としての義務を果たさないと、魔族とはいえ臣民たち、きっと泣くよ。

まあ、途中にルークによるラズシエル、レイプ未遂事件など起こるのですが、そんなこんながあって、結局ルークもラズシエルもお互いに憎からず想うようになり、その後ほのぼのとした展開が続きます。

そしてクライマックスは、魔族の王イシュルスがエルファーン王国を征服するために侵攻してくるのですが、その時、ルークは魔族を裏切り、人間側について戦います。そして父を倒し、ラズシエルを守る。
うん、主人公にすると、とってもハッピーな展開なんですけどね。
僕は読みながら、なんだか複雑な気持ちになってしまいました。なんとなくわかりませんか?

ただね。他のティアラ文庫の作品では、愚かな男キャラが登場してくるとかなり嫌気がさしていたのですが、この作品の場合、ルークをそんなに毛嫌いしていない自分に気付いたのです。
不思議だな。なんでだろ・・・

理由はわりと単純でした。
作者は、ルークをかなり「へたれ」キャラとして書いているのです。いろんなことに迷っているし、凹むし、いらだつし。
「へたれ」は七難隠すってわけじゃないでしょうけど、それだけで僕はずいぶん同性キャラに甘くなるようです。
まあ、当たり前といえばそうなんですよ。自分のことを「へたれ」と思っているので、なんとなく親近感があるというか、愚かな行動は僕も何度もやっているので、しょうがないよねと寛容になるというか。

じゃあ、他のティアラ文庫の作品で、なぜ僕は男キャラの許容度が低かったのかというと、他の作品では主人公(ヒロイン)のお相手キャラは、カッコイイ、ヒーローとして書かれていたので、いくつかの作品でお相手の男キャラが愚かな行動をとると、「いや、それはないだろ」と嫌気がさすということだったようです。嫉妬心じゃないと思うんですけど、そうなのかな。自信がないや。

話を戻しますが、ええ、このルーク。好みはあるでしょうけど、愛嬌があるんですよ。不思議な感じです。女性は、こういった「へたれ」な男キャラってどうなんでしょう。好むのでしょうか?
既刊のティアラ文庫12冊全部読みましたが、他はすべて「へたれ」でない、ヒーロー然とした男キャラだったので、とても興味があります。

そして、たぶん、このルークというキャラの好みが、この作品の好悪につながるだろうと思います。





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