(ティアラ文庫)「黄金の皇子と白銀の騎士姫」感想

黄金の皇子と白銀の騎士姫 (ティアラ文庫)黄金の皇子と白銀の騎士姫 (ティアラ文庫)
著者:ゆきの 飛鷹
販売元:フランス書院
発売日:2009-09-03
おすすめ度:5.0
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プロローグで主人公のティリアがシェオール皇国に訪問して、皇子リュカオンと出会うパートはとても面白く読ませてもらったのですが・・・
とても少女小説っぽくって、幼い頃会った憧れの君を想い続けるなんて、とてもいいなあと感じていました。

でも、リュカオンがティリアの国、アルスター王国に亡命してくるくだりから、だんだんと読むのがつらくなってきました。
またまた男女の感性の差を感じ始めたからです。
必ずティアラ文庫のその月の刊行分のうち、僕が男性であるがゆえに、1〜2冊こういった感性の差に悩まされるものがあるのですが、これは作り手(作者と編集者)がよい意味で意図的に作っていると思っています。

どんなところに感性の差を感じているかということを、作り手へのダメ出しと感じさせず説明することが、これまでできませんでした。そこで感想には、「これは女性向けだと思います」と書いていました。ただこの作品はちゃんと説明できそうな、よいケースのようなので、今回はちゃんと感性の差について書こうと思います。

さて、僕が気になって途中で読みづらくなった理由は、亡命したリュカオン(亡命時はナルセスと名乗っていましたが)の政治の感覚です。
この物語のシチュエーションならば、リュカオンは、亡命時、アルスター王国で積極的に外交を行い、味方を増やし、将来、国を乗っ取ったエグベルドに対抗できる力を養うべきだと僕は思いました。そして、そのためには、ティリア姫と婚姻するのが一番手っ取り早い。
叔父の目から逃れてナルセスになり臣下を影武者にするという気弱な策ではなく、堂々とリュカオンを名乗り、ティリア姫に求愛し結婚にこぎつける。そしてその関係をてこに同盟関係を作り捲土重来を期す。目の前にいる姫の心ひとつに、自分の臣下と国民の将来がかかっているのです。がんばらないとね。
そんなわけで僕はリュカオン(ナルセス)に頼りなさというか、国民への義務感というか、僕がこの人の臣下だったらいやだなと感じたのです。その結果、だんだんと物語に入って行けなくなりました。

たしかに、そういったリアルで強かな男キャラの方がいいという女性読者もいるでしょう。しかし、そんな計算高い男キャラじゃあ、萌えるはずないよという読者が多数いることを、僕は知っています。だってね、そういった男の打算からくる結婚を受け入れたいですか?
それに対して、リュカオンはなによりもティアラ姫のことが大事なんです。女性にとってはこちらの方が真のヒーローですよね。
ね、男女の感性の差は、かなり大きいでしょ。
(前置きが長くなりましたが、これを言いたかったのです)

そして強かで計算高いヒーローキャラを設定すると、物語は全く違うものになってしまいますよね。少女小説というより、謀略小説と呼ぶべきものになりそうです(笑)

一方、この物語は、純愛で、一途で、元気あふれるティリア姫が、二人いる魅力的な男性のうち、真実の愛をもたらす男性を賢くも見抜き、そして幸せになる、そういったとても甘いラブストーリーです。
そして、そのようなとてもハッピーな物語を読みたいと思っている読者(特に女性読者)の願いをかなえるべく、作者は女性好みのヒーローキャラを設定して、物語を展開しました。
そしてさまざまな試練を、ティリアとリュカオンは信じあい協力し合って乗り越えていきます。
うーん、こんなあたり乙女心をくすぐるとおもうんですよね〜
僕もこの作品のよさはわかっているつもりです。


そんなわけで、この物語は男性にはちょっと微妙かもしれませんが、甘い恋物語を読みたい女性読者には、きっとツボにはまると思います。
だってね。ティアラ文庫は、そういった女性のための文庫なんですから。




(追記)
9月は、応援している「わかつきひかる」さんもティアラ文庫で新刊を出しています。
そちらの記事は、「わかつきひかる」さんを応援するWikiの方にかいていますので、この機会にぜひご一読ください。
また、これまで既刊のティアラ文庫すべての感想も書いていて、そのリンクもおいています。

わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」のページはこちらです。