(ティアラ文庫)「死神様と紅き契約」感想

死神様と紅き契約 死んだ私と死にたい彼 (ティアラ文庫)死神様と紅き契約 死んだ私と死にたい彼 (ティアラ文庫)
著者:柚原 テイル
販売元:フランス書院
発売日:2009-11-05
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書評のくせに突然なのですが・・・
ラヴェルのボレロってご存知でしょうか?
実は、この作品を読みながら、僕はボレロを思い浮かべていました。





ボレロは、とても特徴的な曲です。
初めから最後まで、同じリズムが小太鼓によって刻まれています。
そして、旋律は2種類。それが計18回クレシェンド(だんだんと音が大きくなる)しながら繰り返されます。そうして、クライマックスを迎えると、最後の2小節だけ違うリズムを刻み、雪崩落ちるように幕を閉じます。

以上が簡単なボレロの説明なのですけどね。


この作品も、単調な同じリズムで、同じ旋律(行動)を繰り返して、だんだんとクライマックスに向け盛り上がるあたり、なんだかボレロみないな作品だなあと感じたわけです。

1回のシーケンスは、次のような感じですね。

1.死神がやってきて的場の危機を伝える。
2.的場が自殺しようとしている現場に急行する。
3.的場の自殺をとめる。
4.的場がヒロインを性的にいたぶり、ヒロインは感じる。
5.家にもどる。そして死神ローンの残高が伝えられる。

ふーん、面白い構成だなあ・・・
そんな感想を持ちました。
まあ、死神がやってくるだけでその後のイベントのない日もあったりして、行為がずっとエスカレートするというわけではないし、死神ローンの残高は時々減ったりするから、ボレロのように、ずっとクレシェンドで、というわけでもないのですがね。

人によっては(というかこの表現をする人の方が圧倒的に多いと思うけど)ゲーム的とでもいうのでしょうか。
1日1イベントのゲーム日常を過ごしているという感もあります。

この作品は、的場という男、こいつはどうしようもない性悪なヤツなんですけどね。世を捨てようとしていて儚げで憂いがある、しかし傲慢で人の心を弄ぶ美少年というヤツで、危険な男です。
さて、こういった男はお好きですか?

Yesの方、この本をお薦めします。
Noの方、おやめになったほうがいいかもしれません。
たぶん、この作品の好悪は的場という男に対する感情によって分かれると思いますね。

さて、僕的言えば、構成がなかなか面白かっただけに、僕だったらこう作るのになあという、代替欲求があるのです。
んー、なんだろ。
自分では小説を書く才能なんてないと思っているのに、こう思うというのは? これも不思議な感覚なんですけど、「きらいじゃないのだけど、そしてどっちかというと好ましく思っているのだけど、満足もしていない」感があるのかな?

うまい表現が見つからないので、ここでは思い切って下品な表現をしてしまいます。

おしっこを我慢して、ようやくトイレに駆け込む。
そして我慢したものを一気に出す。
ああ気持ちいい〜
でも最後ちょっと切れが悪くって、残尿感がちょっと残った。
おしっこもらさずに済んで、すっきりはしているんだけど、ちょっと気持ち悪い。
こんな感覚なんですよ。


どのあたりにあるのでしょうか。
ぼくは、この作品のエピローグが不要と思いました。

そう、ボレロのようにクライマックスのあと雪崩打つように終わって欲しかった。僕はそう思いました。
この作品は、その方がより格調高くまとまったと思うのです。

最後のお仕事が終わる。当然それは強引なセックス付き。
ヒロインは今日で寿命がつきると思っている(これは同じ)。
それで二人はお別れをしようとする。
でもそこに死神がでてきて、ローン残高がないことを告げ、二人は希望を持つ。で、物語はそこで終わる。
こんな感じかな。
異論はあるでしょうね。




(追記)
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜひご覧ください。