デジタル出版権を巡る動きの考察(その2)

その2では、電子出版に関するステークホルダーの分析をしてみたいと思います。

まずはステークホルダーを洗い出します。
1.出版社
2.取次会社
3.書店
4.印刷会社
5.電子書籍端末メーカー
6.作者(著作権者)
7.読者
8.アマゾン

それでは、最初は出版社から利害分析をしてみたいと思います。

1.出版社の利害
一番恐れているのは、作者(著作権者)が直接アマゾンと取引を始め、自社の売り上げを奪われることだ。
出版するために、編集、校正、装丁・デザインなどにコストがかかっている。これまではこれを本の販売で回収してきた。しかし電子書籍が浸透すると、紙の本の売り上げは減り、電子書籍へ売り上げが移る。しかしその電子書籍の売り上げをアマゾンに奪われるかもしれない。それはまずい。

2.取次会社の利害
出版社と書店の物流を取り仕切り、売り上げ回収機能を持つことによって利益を上げてきた。しかし電子書籍では物流がない。また売り上げも直接アマゾンから著作権者へ送金され、回収機能の意味がなくなる。
電子書籍化は百害あって一利なし。
電子書籍化がすすむと、これまでの物流への投資、設備が過剰となり、経営を圧迫していくことが予想される。

3.書店の利害
電子書籍化以前から、アマゾンなどネット書店とは不倶戴天の敵。真っ向勝負をしたいが、どんどん体力がなくなってきている。

4.印刷会社
一番電子書籍化を恐れているのは、印刷会社かもしれない。紙の本がなくなれば、伝統的な印刷は必要なくなる。
しかし、一方、危機感が高かったため、電子書籍化を見越した動きは進んでいる。

5.電子書籍端末メーカー
新たな製品市場ができることを期待している。電子書籍化が浸透すれば、継続的な更新需要が生まれ、長期間の商売ができる。
デファクトスタンダードとなる機種を開発できれば、収益は大きい。

6.作者(著作権者)
いろんな考え、立場があり、ステークホルダーとして意見がまとまることはない。既に成功を収め、出版社との力関係で優位にある作者は電子書籍化を好ましくは思わないだろう。
一方、新人、あるいは駆け出しの作者にとってみると、商業出版は出版社に任せるしかなく、苦しい状況が続く。同人活動に転機を見出そうとするかもしれない。
中堅作家は、個々人の考えによって対応が分かれるだろう。

7.読者
紙の本でなくては読む気にならないという頑固者もいる一方、新しモノ好きもいる。徐々に電子書籍が浸透するが、どこまで利用がすすむかは、価格、電子書籍化されるものの魅力に左右される。
価格が安くなり、新聞等の魅力的なコンテンツが揃うにしたがって利用者は増加する。

8.アマゾン
世界戦略を描いている。端末を売り、ビジネスモデルを提供することで、全世界を対象としたビッグビジネスを展開しようとしている。
日本は大きな市場ではあるが、成熟した市場だ。漢字圏の市場としては中国市場を最終目標に設定しているはず。しかし中国市場を押さえるためにも、第一歩となる日本市場の制覇を目指すだろう。


勝手なことを書いていますが、概ね妥当な水準となるよう考えたつもりです。いかがでしょう?

さて、その2はここまでで終わります。
その3では、ステークホルダーがお互いにどのような関係、動き方をするかを考えていきたいと思います。