(ティアラ文庫)「伯爵は聖乙女にキスをする」感想

伯爵は聖乙女にキスをする (ティアラ文庫)伯爵は聖乙女にキスをする (ティアラ文庫)
著者:ゆりの 菜櫻
販売元:フランス書院
発売日:2009-06-03
おすすめ度:3.0
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ロミオとジュリエット」のジュリエットを、14,15世紀にフランスとイングランドが戦った百年戦争の英雄ジャンヌ・ダルク(真梨)に置き換え、ロミオ役としてストラトフォード伯爵(アレキサンドル)、パリス伯爵役として副官ジャン(サミュエル)をあてた悲恋のストーリーを原体験のストーリーとして設定、そして3人が現代に転生したというプロットで展開する作品だと思います。( )内の名前は、転生した現代の登場人物の名前です。

ちなみに・・・ ご存知だと思いますが、ジャンヌ・ダルクは実在の人物です。それに対しストラトフォード伯爵と副官ジャンは、この物語で設定した架空の人物ですね。

かなり手のこんだプロットだなというのが、読み始めの感想でした。
最初、ダヴィンチ・コードのようなミステリものなのかなと思ったのですが、失われたダルク・ダブレットを巡るミステリはそれほど重要ではなく、転生した3人の主なキャラクターの転生前の記憶、特に主人公の真梨がジャンヌ・ダルクであったころの記憶を少しずつ取り戻していくイベントを中心にストーリーが展開します。

面白そうだなと思ってかなり惹きこまれて読んでいったのですが、上に説明した作品の特徴を概ね把握した時点、それは僕の場合、導入部の終わりぐらい、真梨とアレキサンドルが再会するあたりだったのですが、そのあたりから、ちょっと読むのがつらくなってきました。

理由は2つです。
1.ジャンヌ・ダルク(史実)に、ロミオとジュリエットのような悲恋のストーリーを付加するのにちょっと抵抗があったこと。
2.登場する男性キャラの行動、意識が、女性っぽいことに抵抗があったこと。

語弊がありそうですが、タカラヅカのように登場人物全てを女性が演じているようなストーリーに思えてしかたなかったのです。
逆にいうと、それだけ甘いラブストーリーになっていますから、甘い気分にひたりたいという、そういった方はとても気にいるのではないでしょうか。
600年前のかなわなかった恋を忘れられず、何度も現世に転生して、ジャンヌと結ばれるよう願うストラトフォード伯爵、ようやく現代になってちょうどよいタイミングで自分もジャンヌも転生した。そこで周到に準備し、事件を契機に少しずつ自分の思いを伝え、結ばれる。
600年の時空を超えた恋、その成就と甘いセックス。これがこの物語の見所と思います。

あと、この作者は旅行好きだとHPにも書いていますが、それがよくわかりますね。
僕は、この作品の舞台だと、パリ、ロンドンとフィレンツェぐらいしか行った事がないですが、描写はとても正確だと思います。
そして、フランス国内の描写、オルレアンやボルドーカルカッソンヌマルセイユなどはとても美しく表現されていると思います。



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