[]書評「空想/のべりずむ」

空想/のべりずむ (HJ文庫)空想/のべりずむ (HJ文庫)
著者:藤春 都
販売元:ホビージャパン
発売日:2009-08-01
おすすめ度:2.0
クチコミを見る

この作品も、シリーズ化を前提に書かれています。
同様の感想を、以前、「ギブあっぷ!」にも書きました。
(追記)
「ギブあっぷ!」の感想はこちら
「ギブあっぷ2!」の感想はこちら

HJ文庫に限らないと思いますが、安定的に売れるシリーズ作品が欲しい、作ろうというマーケティング上の要請はよくわかります。

でも、でもですね。
一読者として、お金だして本を買って読むのを楽しんでいるときに、「ああ、この作品はシリーズだから、1巻目はちょっと内容薄くてもいいかな」なんて思わないですよね。そんな事情はあまり知りたくないと感じるのが普通じゃないでしょうか。
特にこの作品は、作者がシリーズ化にあたって、慎重に、そしてオーソドックスに物語を書きすぎたのではないかと、僕は感じてしまいました。

この作品は、2つのエピソードで構成されています。1つめのエピソードが約180ページ、2つめのエピソードが約110ページです。
そのうち、最初のエピソードに試行錯誤感があるといいますか、テンポがあまりよくない感じをうけました。特に主人公が大学図書館に出かけて、ヒロインの姉や教授と会うエピソードには、2人の登場人物の顔見世の意味しかなく思え、冗長に思ったわけです。僕はこの部分をすっぱり削除して、文章量を下げ登場人物を少なくして、ストーリー展開のテンポを重視したほうが、ずっとよかったんじゃないかと感じています。シリーズ化のための伏線として2人の登場人物が必要だというのもわからないではないですが・・・

さて、マイナスの評価はこれくらいにして・・・

この作品のモチーフは、「言霊」です。
強力な「言霊」力を持った主人公、高校生なんですけどすでに作家デビューを果たしているというすごい高校生ですが、彼が自分の革張り手帳にプロットを書くと、それが実際の出来事として起こってしまうという、なんとも空想力、もとい妄想力で溢れかえりそうなお話です。

プロットはとても面白いと思います。
そして、主たる登場人物も、優柔不断だけど人のいい主人公、幼馴染の寡黙な美少女ヒロイン、明るく元気な美少女サブヒロイン、そしてちょっと軟派な男子高校生。
ベタといえば、ベタなんでしょうけど、いろんな展開が書けそうないい配置だと思います。

やっぱり、この作品の魅力は、主人公が言霊として書いた出来事の「奇想天外さ」にあると思うのですね。常識を突き抜けた、突拍子のないことが起こり、そしてそれに魅力的な女の子キャラが翻弄され、ちょっぴりえろっぽかったりして、「男の妄想爆発!」って感じになって欲しかったり。
ええ、そんなわけで、2つめのストーリーはなかなかよかったと思います。

2巻めを期待しています。
物語の設定、プロットは十分ポテンシャルを持っていると思います。
もっともっと、とんがって、突き抜けた事件を起こして、魅力的な2人の女の子キャラたちをいじめてほしいな! お色気シーンつきでね^^
そう願います。

(まったくエロ親父的な感想文だな。ちと自己嫌悪orz..)