[]出版総崩れの中で独り勝ちの角川、文庫で圧倒的な利益を稼ぐ(東洋経済online)を読んで(中)

上場している出版社の場合は株主・市場から、非上場でも有利子負債があれば金融機関から、対応策をより強く求められるようになると思います。
その策として考えられるのは、やはり成功事例の取り込みでしょう。


今後の動向としては、残念ですが中小出版社の廃業・破産の動きはとまらないだろうなと思います。そして大手出版社も資本提携や業務提携などグループ化がさらにすすむのではないかと考えます。間接部門の統合による規模の利益をもたらそうという思惑が起こるのではないかと推測しているからです。
特にマルチメディア化を扱う会社は、資金的な裏づけがますます重要になると思いますので、合弁、合併の対象になりやすいでしょうし、マーケティング・販売の機能は、出版グループ内で集約化の方向にすすむのではないでしょうか。
個人的に注目しているのは、小学館集英社を中核とする一ツ橋グループです。外部からは、中核企業の小学館集英社は、これまでまだ両雄並び立とうとしているように見えます。ただ、ここにきてさすがにかなり厳しい業績となってきていますし、角川グループのように、この2社の間接部門の統合をもっと検討してもいいのに・・・なんて思ったり。2社合計すると売上は角川を凌駕しますしね。
角川の独走を許さないためにも、がんばってほしいなとエールを込めて。(注)

(注)角川に他意があるわけじゃありません。一社独走だと、一読者としては、出版物の多様性が心配なので、できれば他の出版社にもがんばってほしいなという意味です。



さて、次に考えられるのは、風下の変化、つまり書店の統合、連携の強化だと思います。
ここには、注目しているプレーヤー(企業)があります。大日本印刷です。
大日本印刷は、2008年に丸善ジュンク堂を子会社化しています。さらについ先日(2009/9/14)ジュンク堂は、文教堂に出資し筆頭株主になっています。
売上は、丸善969億円、ジュンク堂405億円、文教堂512億円、合計すると1900億円弱ぐらい。まだ取次会社の規模には至りませんが、それでも相当のバイイングパワーがありそうです。
グループ化することでのメリットは、販売在庫情報の共有、情報システムの統合によるコスト削減、店舗政策の協同化などがあるでしょう。販促の側面でも、ポイントカードの発行とか販促品の共通化とか、いろいろ策がありそうに思います。そして今の再販制(委任販売制)から責任販売制に移行した後を考えると、それらは強みになる。そう分析します。

さらに、このグループは、印刷会社が保有しているメリットがあるはずです。結論とその根拠が逆になっているような言い方ですが、だからこそ大日本印刷は書店を買収しているはずだからです。
どんなことが考えられるでしょうか。
僕は、風下の書店からの販売・在庫データと印刷(増刷)を結びつけて、在庫とリンクして増刷する体制、いわばトヨタのジャストインタイムのような仕組みができないものかと考えたりします。(印刷のオンデマンド化とでもいうべきなのかもしれません)
そのためには、小ロット印刷のコスト削減、増刷決定から出荷までのリードタイムの短縮など、課題も多数ありそうですが、それでもなにか解決策がありそうに思うのですね。
例えば、単行本は無理でも、文庫については、紙質、段組、口絵(カラーページ)などをレーベルをまたいで規格化して、どの作品であろうと印刷作業を同一にするとかの方法はできないのだろうか? なんて、素人考えで考えたりします。
(あ、僕システム屋なもので、ついそんなことを考えるくせがあります。できるメドがあるわけじゃないので、全く無責任な論ですけど。すみません)

本の販売部数は当面下がり続けるだろうという予測のもとでは、返本、廃棄の圧縮を図る必要があるはずで、それと、さまざまなビジネス上の動きを重ね合わせて、上記のような仮説(妄想?)をたててみました。
いかがでしょう?


最後に、取次会社なのですが・・・
この事業は、外部から見えにくくて、なかなか推測できません。
感覚的には、ネットビジネス(直接販売)と親和性が高そうに思えるので、アマゾンを筆頭としたネット書店との結びつきがますます強めていくのでは?なんて感じています。
本当はね、本を購入する一消費者として、町の本屋さんの支援や統合などに力を入れてほしいな、商社機能を充実してほしいなと思うのですけどね。これはあくまで願望ということで・・・


この中篇は、僕が業界に全く関係ないのをいいことに、あることないこと大胆に推測というか、妄想してみました。業界関係者の方、ご不快になりましたら、陳謝いたします。どうぞお許しください。また、見識のなさはどうぞお笑いください。
さらに、ここに書いていることについては、全く責任を持てないことを明記しておきます。



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