[]出版総崩れの中で独り勝ちの角川、文庫で圧倒的な利益を稼ぐ(東洋経済online)を読んで(下)

将来の出版というか、コンテンツビジネスに関して、紙媒体から電子媒体への移行の問題は重要な話題のひとつだと思います。

懐疑的な見方もあります。電子媒体は紙媒体のビジネス規模を超えないだろうという意見ですね。一方、かなりの占率で電子媒体へ移行するという予測というか願望も聞かれます。
それで、昨日はほとんどの書籍、雑誌が電子媒体へ移行した世界を描いてみました。(昨日のエントリはこちらからどうぞ「妄想・・・」)

昨日のエントリの中では、電子媒体への移行がすすむと、言語の壁、国の壁が今までよりも低くなり、新たな市場の開拓につながる可能性も書いています。電子媒体の場合、ネットを使って配信することができますから、世界中に読者を増やす事ができるかもしれません。
特に、マンガのように、視覚的な出版物(言語の占める割合が少ない)の場合、多数の言語版を同時配信とかもできる可能性があります。
特に新興国、例えば中国やインドのような人口の多い地域に受け入れられれば、出版の事業規模は今とは比較にならないぐらい大きくなる可能性もあるのではないでしょうか。

こういったイノベーションについては、両極端な予想の中間の結果になることが多いので、昨日はばら色シナリオをちょっと書いてみたつもりです。暗黒シナリオは書きませんので、どうぞご想像ください。

さて、電子化が歓迎する動きなのかどうかは、(当然デメリットもありますので)意見の分かれるところだと思いますが、電子化がすすむかどうかの大きな鍵となるのが、書籍ビュワーと呼ばれる端末の普及がすすむかどうかであろうと思います。

書籍ビュワーについては、アマゾンのキンドルが有名ですね。専門家でないので断言はできないですが、製造についての技術的な問題はないと思いますね。(キンドル
普及へのハードルは、価格と重量ではないかと思います。
キンドルも小さい方は299ドル、大きいDXだと489ドル。まだ高いですね。大きい方で2万円を下回ったら、買いたいなと僕は思います。小さい方だと1万円を切ってほしいかな。
重量ですが、紙媒体のよさは、軽いことだと思います。普通の文庫本の重さは100〜200gだと思います。(1冊実際に計ったら140gでした)
これからすると、端末も200gに限りなく近づけて欲しいなと思います。
キンドルは、小さいほうで310g、大きいほうで535g。少し重いかな。
機能・・・ 保存した書籍を表示してくれれば、それ以上のものはいらないのではないか、僕はそう思います。
端末の魅力ではなく、そのサービス全体の魅力で売っていく、そういった視点に立つべきなのではないかと主張したいと思います。

実は、上記の単純な端末には、違う用途も考えられます。
それはなにかというと、企業のマニュアルや説明文書の電子印刷です。
通常、マニュアルや説明文書はワープロ文書になっていますが、これを持ち運ぶため、紙に印刷しています。社員がひとりひとつ、こういった端末を持っていて、必要なものはこの端末で見る。そして持ち運ぶ。
そうすれば、大量に消費されている紙を排除することができます。
プリンタやコピー機がいらなくなって、紙の使用量も下がり、コスト的にもいいでしょうし、なによりもエコです。
ここで言いたかったのは、量産効果も望めるということです。

シンプルで安いものを・・・
そう願っているのですけどね。なかなか出てきません。


普及に向けた次のかぎは、ビジネスモデルの構築でしょう。
電子書籍の販売は、確かにオンラインショップ向きなんですけどね。じゃあ、書店が全く無価値になるかというと、そうじゃないと思います。
読みたい本が見つかっている場合には、ネットで買うのが便利でしょうが、今旬なものを読みたいとか、お薦め本を読みたいとかそういったアドバイスや告知機能を書店に求めている人って多いと思います。
また、ちょっと立ち読みして内容を確認したいとかもあるでしょう。

ビジネスとして普及するためには、動機とりわけ収益向上に結びつく事が重要です。今出版に関係しているプレーヤー(ステークホルダー)に、電子書籍となることで被害をうけるプレーヤーが多ければ多いほど、普及は阻害されます。そういった観点から、書店やコンビニのようなリアルな店舗が電子書籍を扱うメリットがあるビジネスモデルの構築が重要だと思います。
実は印刷会社、中編で触れた大日本印刷にしろ、凸版印刷にしろ、電子ペーパーの研究は進めているようですし、そういった会社が書店を巻き込んで電子書籍化に本気で取り組み始めたとき、一挙に浸透することもあるのではないかと考えます。


僕は、今後10年で出版業という特定の業態だけでなく、紙媒体に関連する業態全体で、大きな変化があるのではないかと考えています。
一方、そういった専用端末ではなく、携帯のコンテンツビジネスが主流なのだという観測もあろうかと思います。その場合は、紙を完全に置き換えることはできないでしょうから、今より規模は縮小するものの、紙による出版は続いている、そんな状態が予想されます。

再度、書いておきますが、電子書籍化すれば国内市場が大きくなるとは思いません。それは、従来の紙媒体の書籍が主流として残ったときと同じく、縮小していくと思います。
収益向上のためには、今までのように国内市場のみを対象としたビジネスではなく、広く海外に目を向けてコンテンツを輸出するビジネスモデルに変革してほしいと思うのです。そして海外への浸透を狙うとき、電子書籍化は国の壁、言語の壁を越えやすくなりますから、マンガや、ライトノベルのようなキラーコンテンツの力を利用し、浸透を図る。そしてそれを達成するビジネスモデルを業種を超えた連携によって実現する。
そう願います。


キンドルという黒船に乗った、第二のペリー提督(海外の作家のこと)の襲来など見たくないのです。
日本の業界の力を信じています。




お読みいただきありがとうございました。
ここに書いたことは、できる限りの調査をして書きましたが、僕自身の不明により誤り等あるかもしれません。どうぞお許しください。


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