(ティアラ文庫)「奪われた姫君と真紅の紋章」感想

奪われた姫君と真紅の紋章 (ティアラ文庫)奪われた姫君と真紅の紋章 (ティアラ文庫)
著者:TAMAMI
販売元:フランス書院
発売日:2009-12-03
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悪くはないんですよ。
萌え感も十分ですし、お相手役の男性キャラも魅力的だし、大立ち回りもあるし、中世ヨーロッパのロマンチックな風景(史実がロマンチックだとは到底思わないけど、それは置いておいて)の描写も盛りだくさんだし・・・
これぞ乙女系〜といった作品だと思います。

でも、最初にダメ出しひとつ。
第1章は、この小説世界の説明を兼ねていて、とてもわかりやすいんですね。わかりやすいのはいいことなんですけどね。
次にあげるものが3つ揃うとどうなるか・・・

1.とても解りやすい小説世界の説明(第1章)
2.正しく説明している登場人物説明と地政学もある程度わかる地図
3.この作品の肝をとてもうまく説明している裏表紙説明文

ひとつひとつ読んでも、それが説明している以上のことはわからないのだけど、これら3つを結びつけて考えると・・・
この作品が最後に明らかにする裏の設定が分かっちゃうんですよ。わーん!!
ちょっと、謎解きのヒント与えすぎです(泣)

だってね、だってね。
政略結婚で嫁ぐ姫を強奪して純潔を奪って得するのは誰?
って考えると答えは自明じゃないですか・・・

まあ、たしかに、全部分かるわけじゃないけど・・・
たしかにミナの素性は読み違えたけどさ。
でもさ、冒頭20ページ読んで、ラストシーンがだいたい想像できちゃうと、やっぱり残念なんです。

これだけ、くどく書いているということはね。
もしそれが分からなかったら、かなり面白かっただろうなと思える出来栄えなんで、本当に残念だからなんですよ。


ただね、逆に考えると、こうも評価しています。
この作者さん、背景設定がとても自然で上手ですね。
だから、ストーリーが読めちゃうんだと思いますから、このよさを生かしつつ、もっとよくするためには、もう少し、徐々に背景を明らかにする工夫があるといいのじゃないかと思いました。

最初に書きましたけど、ストーリーは面白いです。
僕は男だから、お前から言われてもなあというそしりをうけるのを承知でいいますけど、乙女心くすぐりまくり〜といった展開なのではないでしょうか。

作者さんがあとがきで、
(引用はじめ)
このお話には、自分の好きなものをめいっぱい盛り込みました。
純真無垢なお姫様。剣での戦い。馬や馬車。森の中の廃墟や、古いお城。書いている間中、私はとっても幸せでした。
(引用おわり)
こう書いているのですが、とても素直にうなづけます。

僕はね、作者さんが「こんなもの書きたい」「楽しく書いた」っていう思いが、作中から溢れてくる作品が好きです。
そういった意味で、この作品からは、作者さんの書いていて楽しいという思い、とても幸せな雰囲気を十分感じ取れました。
ええ、とてもいいと思います。

だからこそね、いや、僕が悪いんだろうけど、僕はこういった政略系の物語を読むときは、登場しない人物や国の動きを補いつつ読むのですよ。そうしたら分かっちゃうんです。ああ。

そんな読み方しない方がいいと言って見る。無責任だけど。

ああ、もったいないことをした・・・
そういった思いとともに、この作者さんの今後の活躍を期待して、この作品の感想とします。