(GA文庫)「蒼海ガールズ」感想

蒼海ガールズ! (GA文庫)蒼海ガールズ! (GA文庫)
著者:白鳥 士郎
販売元:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2009-08-15
おすすめ度:4.0
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この作品、面白いです!
気に入りました。

やはり僕には「帆船」はツボだったんだなあと改めて思いましたよ。
僕的には、この小説の主役は「ビシャスホース」ちゃん。
彼女は、とても優雅な3本マストのフリゲートなんですよ。
砲門数24門です。

こんな感じの船でしょうか。

Essex

戦列艦に比べると軽武装ながらも快速なため、戦闘のみならず哨戒やら護衛やら多目的に使われたのがフリゲートです。
ちなみに、こちらのサイトがとても詳しく説明していらっしゃいますので、ご紹介します。 「蒼色ガールを読む為の補足

上記のブログの筆者さんも書いていましたけど、僕も「蒼海ガールズ」の船はイギリス海軍をモデルにしたんだと思います。
(上の絵は、USSエセックスというアメリカ海軍のフリゲートなので、ちょっとイメージが違うかもしれません)

ちなみに、上記のブログでは、「蒼海ガールズ」では艦長を「スキッパー」としていると書いていますが、くわしく作品を読むと、ファムが艦長の悪口を言っているときに・・・
「あのアホ艦長(スキッパー)めが!(以下略)」 (p.15)
となっていますが、次のページ(p.16)には・・・
「ハッキリ言って、艦長(キャプテン)以外は誰も納得していない。」
と艦長の呼び名が変わっています。
15pでは、ファムは悪態をついていたわけです。そんなわけでそのとき艦長のセリムを貶める目的で、あえて軍艦の長たる「キャプテン」を使わず「スキッパー」と言ったのではないかなと僕は思います。ファムのそんな内面を作者は行間に表そうとしたのだろう、とても芸が細かいなと僕は評価しました。
(単に誤植かもしれませんけど・・・)

それから、この作品の特徴は、なんと言っても設定でしょう。
紅帝国(中国風)の皇子の主人公シューフェンは、祖国での皇位継承を巡る争いに巻き込まれ、アラミス王国へ亡命を図ります。アラミスはその正式名称「アラミス聖女王国」からもわかるとおり、女だらけの国です。
シューフェンは追っ手から部下の献身によって、なんとか一人アラミス王国の船にたどり着きますが、そこはなんと! 女の園(笑)
男1対女200の超ハーレム展開!
さらにさらに・・・ アラミスの船は、男子禁制で、男子であることがわかると死刑になるんだそう。そこで、なんと、というか、予想通りというか、シューフェンくんは女装することになりました。

つまりですよ。この作品はね。
「男の娘」+「超ハーレム」+「海洋冒険もの(帆船)」というトリプルアクセル、もとい三連コンボな設定になっているのです。
この作品は、プロットが終わった時点で、ほぼ成功が見えていたのではないでしょうか。

・宮廷の騒動と逃亡劇
・広大な海での漂流と救出
女の園となっている船
・きれいな海
・皆のマスコットになったかわいい男の娘
・雨が降ったといっては、みんな裸になって水浴びをするガールズたち
・異国情緒あふれる(たぶんインドとか東南アジア風)町への上陸、そして活劇
・港でも封鎖と間一髪の脱出劇
・1対7の帆船同士の艦隊戦
・ガールズたちの切り込み、そして勝利

うーん、僕の脳内絵は、とても美しく描けています。
すばらしい。

僕は、この作品について次のように主張します。

「この作品は、メディアミックスに適した作品だ! ぜひアニメ化をお願いしたい!!」



追記
この作品のシチュエーションって、これまでは妙齢の王女様が難を逃れて船に逃げ込む・・・って話が普通だったと思いますよね。しかし、この作品の中の男女の役割分担が、伝統的な役割とまったく逆なんですよね(笑)
もしかして、最近の若い男性って、シンデレラ願望(男バージョン)って持っているのかなあとちょっと考えてしまいました。
まあ、そんな難しいこと考えるべきでなくって、この荒唐無稽な(ほめ言葉です)物語を単純に楽しんだほうがいいと思いますけどね。
ちょっと、読みながらそんな感覚を持ったもので、こんなことを書きました。