(ティアラ文庫)「妖かし恋奇譚 黒龍と堕天使」感想

妖かし恋奇譚 黒龍と堕天使 (ティアラ文庫)妖かし恋奇譚 黒龍と堕天使 (ティアラ文庫)
著者:水戸 泉
販売元:フランス書院
発売日:2010-01-05
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この作者は一風変わった作品を書きますね。
この作品は、現代物、それもティアラ文庫ではめずらしい日本の学園生活を描きながら、そこに出てくるヒーローキャラは、二人とも人外です。
一人は黒龍、一人は堕天使(能天使
タイトルからわかりますよね。

その戦いの原因が、ヒロイン夕那に対する淫らな欲望、なんていうと上品な感じなんだけどね。直接的に表現すると、まあなんというかあれだ、ヤリタイ、セックスしたいという男の欲望だったりするところが、この物語の面白いところだと思いますね。

まあ、そんな感情を、モロ、ダイレクトに表現すると、女性読者は引くと思いますし、さすがは女性作家、そのあたりはとても女性向けに仕上げていると思います。

マイフェアレディのエロ版、紫の上の物語の現代学園版。
題材は少し古典的かもしれませんね。でも僕のようなおじさんには、そんなわけでわりと安心して読めました。
テイストとして、もうひとりのヒーロー役を配置して、いい男二人の間でちょっと揺れる女心みたいなものもあります。そして、毎日痴漢され、一旦はレイプ寸前に陥る気持ち悪さもあり、毎晩夢うつつで官能を弄ばれ性的に変わっていく身体という悶えもあります。
性的な危機を何度も読者に提示しつつ、ぎりぎりで踏みとどまる感覚。
そして最後に全てがわかって、ひとりの男を選ぶ。
そんなところが魅力でしょうか。
男である僕にもすんなり読める作品です。ライトな感じですね。


さて、ヒロインは、二人いるヒーローのどっちを選ぶでしょう?
実は僕にはちょっと意外だったのですよ。

僕は好きな人の前ではいいところを見せたいという女性もかわいらしくて好きですが、でも素直に自分を全部出して背伸びせずに付き合える関係のほうを好ましく思うのですね。
だから・・・
ちょっと意外だったのですけどね。
でも、すんなりと面白く読めた作品です。

皆さんはどうでしたでしょう?


(追記その1)
やはり女性が性的な行為で痛い思い、辛い思いをする記述は好きでないみたいで、この作品にはそういったところがないのがいいですね。
痴漢も、レイプもセーフな状態で終わりますしね。



(追記その2)
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜひご覧ください。