(ティアラ文庫)「オリエンタル・ロマンス 騎士は花嫁を奪う」感想

オリエンタル・ロマンス 騎士は花嫁を奪う (ティアラ文庫)オリエンタル・ロマンス 騎士は花嫁を奪う (ティアラ文庫)
著者:館山 緑
販売元:フランス書院
発売日:2010-01-05
おすすめ度:5.0
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面白かったと思います。
ティアラ文庫の売りである「エロ」いわゆるセックスシーンは、とてもおとなしいのですけど、普通に面白いというか、そんな表現はちょっとよくない表現かもしれませんが、本当に普通の女の子らしいヒロインの自然な心の動きが丁寧に書かれていて、僕は好感を持ちました。
この物語のよさは、突然現れるシャガードのことを警戒しつつもだんだんと惹かれていく、ヒロイン、シーリーンの心の描写です。
領主から逃れて逃避行をするわけですが、二人きりの逃避行は自然に二人の心を近づけます。相手役のシャガードは、実直でたくましく、ヒロインを想う心は情熱的で女性を大事にする真心に溢れた男です。

現実には、そんな男いるわきゃねー!というタイプの男ですが、それがこの作品の最大の魅力です。不思議なことに、僕の男の目からみても、このシャガードは好感を持つんですね。なんでだろ。自分の心に率直でありながら、義務と秩序をわきまえている男だからなんでしょうか。
もし、現実にこんな男性がいれば、確実にリーダーになるでしょう。

さて、これまでずっと褒めてきましたけどね。この裏返しが、この作品の弱さでもあると思います。
登場する主な男性は3人です。
前述のシャガードと、その恋の相手役である領主トゥース、そしてシーリーンを捕らえにやってくるシャガードの元同僚であるヤズダーン。

3人ともみんな好ましい男性だと思います。
ただね、3人好ましい男性がそろっちゃうと、少し浮世離れ感がでてくるかもしれないのですね。
もう少し、男性キャラの中に、負の感情、マイナスイメージがあるほうがリアル感がでるかもしれません。

かわりに・・・
この作品の持つ透明感が失われるかもしれません。そういった意味では、上にあげた長所も短所も、それは同じ事を指しているように思えます。全体としてみれば、とても読みやすく、少女小説らしいつくりになっていたかなと思いますね。

ひとたび好きな男性を見つけたら、何があっても好きを貫く、そういった感情を楽しみたいとお思いでしたら、この作品をおすすめします。
ちょっとドロドロっとした関係をお望みでしたら、物足りないかもしれませんが・・・

最初に書きましたけど、僕は、こういった作品は好きです。



(追記)
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜひご覧ください。