わかつきひかる作品の昨年を振り返る(12)「(若月凛)華族調教」

いよいよわかつきひかるさんの作品を振り返るシリーズも最後になりました。今日は若月凛作品「華族調教」です。

時は大正9年。西暦1920年
大正デモクラシーの真っ只中です。
そうそう、学校で習ったと思いますが、初めての政党内閣といわれる原敬内閣が政権をとっている時期です。
このときの大蔵大臣は、有名な高橋是清さんだったのですね。

なんだかこのころの出来事って、学校で習ったはずなのにうろ覚えだったのですが、改めて調べてみると、本当に世界は激動の中にあったのがわかります。

1917年 ロシア革命
1918年 第一次世界大戦終結 シベリア出兵
1919年 パリ講和会議 ヴェルサイユ条約
1920年 国際連盟設立
1921年 原敬首相暗殺 ワシントン軍縮会議 日英同盟破棄


話は変わりますけど、若月凛作品の前作「舞妓誘惑」は1987年でしたね。その前後も激動の時代でした。
印象深いのは1989年11月のベルリンの壁崩壊ですね。金曜の深夜ぐらいからテレビの生中継やっていました。国境のゲートに人々が集まりそしてゲートが開く、そして今度はハンマーなどで壁を取り壊していく、ちょうど土曜で休みだったので、そんな状況の推移をずっと見ていました。
東西冷戦はずっと続くと思っていましたし、ベルリンの壁は永久に存在し続けると思っていましたけど、そういった人を抑圧するものもいつか壊すことができるのだなあとしみじみ思ったのを思い出します。テレビを見ていて、涙が止まりませんでした。
その年の6月にあった天安門事件もテレビで見ていて、その結末に失望と悲しみと怒りを感じていただけに、感動もひとしおでした。
歴史は動きます。いい方向にも悪い方向にも。
もう20年もたつんですね。時がたつのは早いなあ。

ちょっときどって、「少年易老学難成」とか言ってみよう(笑)


若月凛作品は、そんな激動の時代を切り取って、めくるめく官能に流されながらも強く生きる女性を描ききっていると思います。
時代の雰囲気を楽しめますよ。



華族調教 (幻冬舎アウトロー文庫)華族調教 (幻冬舎アウトロー文庫)
著者:若月 凛
販売元:幻冬舎
発売日:2009-12
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それでは、華族調教の印象深いシーンをピックアップしてみます。


清治郎は、鈴を二個、奥様の膣穴深く押しこむと、結び目のつくった股縄を噛ませ、縄尻を胸の前後をいましめている縄に結びつけた。
「うっ」
白い肌に絡みつく縄目が菱形状になっていて、縄に触れる肌が痛そうに赤くなっている。
「綺麗だねぇ。さすが伯爵夫人だ」
清治郎は、奥様の私室から持ってきた姿見を、顕子の前に置いた。
「うぅーっ」
顕子がイヤそうに顔を背ける。
皮肉ではなく、縄のドレスを纏った顕子は美しかった。亀甲絞りは、女体をもっとも輝かせる縛り方だが、白い肌に黒い縄が食いこんで、見事な体型をいっそう美しく見せている。

華族調教の見所は、緊縛プレイにあると思います。
これまでわかつきさんは、本格的な緊縛プレイはあまり書いていませんでした。この華族調教の縛りはなかなか本格的で新たな境地にたどり着いたのかもしれないなと感じました。
なにより亀甲縛りは美しいですよね。緊縛のきつさはあまりなくて、それよりも見た目の淫靡な美しさが魅力的です。だからこそ姿見で自分の姿を見せ、辱めるわけですよ。うん、抑えるべきポイントはちゃんと抑えていてなかなかいい感じですよね。


蠟燭を持った男が、乳房と股間を丸出しにしてベッドに拘束されている顕子に歩み寄る。火がゆらめき、男の顔が不気味に歪む。
「い、いや……ま、まさか、まさか……」
男が蠟燭を傾けた。
そのまさかだった。
蠟涙が秘芽に落ち、秘唇ではじけ、真っ白な内太腿を汚していく。
「ぎゃああああっ!! やめてぇー!!」

今度は蝋燭プレイです。これも絵的にとても美しいですよね。
蝋燭の説明なんて、よく調べていますよね。
融点は45度なんですか。
これもわかつき作品ではじめてのプレイですね。



バシイン!
強い打擲が来た。
−−いやっ、やめて。許してぇっ。
「ウグッ」
苦痛に飛びあがった身体から力が抜けるタイミングで、また鞭がはじけた。そして今度は、ごく弱い鞭打ちが続く。
−−なにこれ、くすぐったいみたいな。
背筋に、ゾクッと来る何かがしのびあがっていく。
「んんんーっ」
お知りがほかほかと熱く火照り、充血して痒い。

鞭打ちプレイです。強弱をつけて、時折強く打ち、痛みを与え、次はくすぐったいような弱く打つ、なるほど〜と思われる記述です。
ヒリヒリと、ほかほかと、お尻の感覚が敏感になっていく様がとてもいいと思います。
鞭打ちプレイそのものは、初出ではないのですが、以前に増してグレードアップした感があり、印象深いシーンでした。


そのほか、こういったブログに書くのは躊躇われるような、三人の男に三つの穴全てを貫かれるシーンだとか、浣腸や乳首、クリトリスを縛るシーンやら、全編異なった調教を受け続けるという、とてもすごい作品に仕上がっています。
これで・・・
ハッピーエンドになるのだから、それもすごいですよね。


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