(ティアラ文庫)「EROTICS×ANGEL」感想

EROTICS×ANGEL (ティアラ文庫)EROTICS×ANGEL (ティアラ文庫)
著者:綾月 りょう
販売元:フランス書院
発売日:2010-02-05
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最初にお断りを。
この小説そのものがもっぱら性的行為描写ばかりです。そのためこの感想も性的な表現を多用しています。
もともとこのブログはアダルト指定していますが、性的表現に嫌悪をお持ちになる方と18歳未満の方は、この記事をお読みにならないように重ねてお願いいたします。


それでは感想です。

女性向け官能小説というジャンルがあるとすれば、この作品はまさしくそのジャンルの作品ですね。
賛否はあるでしょうね。

まずはじめに断っておかねばならないことは、官能小説にストーリーはほとんどないしそんなに必要ないということです(笑)
ただただひたすらセックスするだけなんですよ。
男性向けだと、長い時をかけて、いろいろと確立されたスタイルがあるのですけど、女性向け官能小説ってまだそんなにスタイルが確立されていないのだと思いますが・・・

この作品は、「純愛陵辱もの」といえると思います。

処女を奪われ、官能を開発され、身も心も堕ちていきながら、だんだんと相手のゼルの気持ちに気づき、相思相愛になっていく。こんなストーリーというか、もともと官能小説にストーリーはほとんどないので、こんな設定というべきか、そういったものです。

行為描写、いわゆるセックスシーンは全部で9回。
ちょっと多いかな。
行為描写が多いと、その分1回あたりの紙面数が少なくなって、描写が薄くなるのではないかと思いますから、ちょっと多いかなと思いました。

さて、この作品の評価は、「男」である僕にはできそうもありません。
これがいわゆる男性向け官能小説であれば、「実用(注1)」面での評価が全てと思うのですけどね。女性向け官能小説は何を基準に評価していいのかわからないからです。

(注1)これを読んでいる女性の方、際どい表現でごめんなさいね。「実用」とは自慰行為のことです。

女性の場合は、僕が知りうる限り、直接的な行為描写のエロよりも精神的なエロを好むのじゃないかと思うのですけども。
いや、まあ、女性とそういった性的な興奮に関する話をそんなにする機会もないし、相手も限られるので、「一般的」にどうかは全くわからないのですけどもね。過去の数少ない経験では概ねそうだったと思うのです。

また、男性向けの官能小説でも、僕は官能小説の中のヒロインの心理描写とか感じている様、それも女性の内面の官能の描写が濃いものがすきなんですよ。そういった面から、僕は男性が書いたポルノよりも女性が書いたものの方を好むらしいのです。だって実際のところ、男である僕には、女性がどう感じているかなんてわからないじゃないですか。でも小説だったら擬似的に理解できるわけで、だからこそ他の媒体でなく、小説がいいし、好きなわけです。(注2)

(注2)僕がいわゆるSっ気があるせいかもしれません。Sといっても打ったりとか痛みを与えるというのが好きというわけでなく、女性が興奮するとそれで自分も興奮する、逆に女性が嫌がるととたんにどうしようもなくなるという習性なのですが、そういった習性から女性官能小説家の小説が好きなのかもしれません。


さて、この記事はかなりの割合で女性が読むのを承知で、こんな恥ずかしいことを書いているのは、この作品は全編ほとんどセックスシーンで構成されていますが、そのシーンはずっと行為描写が続き、ヒロインのフェリシアの心理描写とか内面の官能の描写とかが薄いと思ったからなんです。

女性もこれを「実用」のために読むのかどうかはわかりません。

重ねて書きますが、僕が「女性」の官能小説家に求めるのは、女性の視点に立った描写なのです。しかし女性読者もそうかどうかが、僕にはわかりません。それだったら、なぜ僕が女性視点の描写を好むか、その理由を説明すれば、この記事を読んだ女性も、この作品の評価の参考になるかもしれない。そういう思いがあったからです。
そんなわけで、ちょっと気恥ずかしい感想をお読みいただいて、ありがとうございます。参考になったでしょうか? それが心配です。


最後に・・・
この作品は、とても意欲作だと思います。
そこはまずなによりも評価すべき点でしょう。
そして作者は、この作品がデビュー作だとあとがきに書いていました。
まだちょっと硬い文面も、これから精進することでずっとこなれていくと思います。がんばってください。



追記
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜ ひご覧ください。