(スーパーダッシュ文庫)「僕とヤンデレと7つの約束」感想

僕とヤンデレの7つの約束 (集英社スーパーダッシュ文庫)僕とヤンデレの7つの約束 (集英社スーパーダッシュ文庫)
著者:みかづき 紅月
販売元:集英社
発売日:2009-08
おすすめ度:4.0
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今月はスーパーダッシュ文庫月間にするなんてことを言いながら、結局あまりレビューを書いていないめたぼdeぽんです。
それでも、スーパーダッシュ文庫、少しずつ読み進めています。
今日は読み終わった本の中の一冊、みかづき紅月さんの「僕とヤンデレと7つの約束」の感想を書きます。

さて、この作品にはひとりの主人公とそれを取り巻く8人のツンデレヤンデレの女の子という一見ハーレム展開?と思われるシチュエーションですが、この作品はヒロイン、ヤンデレの刹那と主人公零王の関係を中心に展開していきます。
やはり、みかづき紅月さんは1対1の男女の関係を書いたほうが、らしいですよね。(注)

裏表紙のあらすじ説明はこうなっています。
(引用はじめ)
ツンデレ喫茶のメイドたちへ、正しい接客術を教えることになった高校生・零王。だが彼の未熟故か、彼女たちのツンデレ故か上手くいかない。そんな中、刹那 という少女だけは他のメイドたちと異なり、零王から積極的に学ぼうとする―。刹那との距離が縮めば縮むほど彼女の愛が暴走しはじめ、ヤンデレ状態になり、 ついには彼を…。果たして零王は無事に刹那と結ばれるのか!?純愛系ヤンデレラブストーリー開幕。
(引用おわり)

前半は、普通のツンデレ彼女とだんだん仲良くなるという話に徹しています。とてもTypical(典型的)な話だと思いました。
悪く言うと、どこにでもありそうな話なんですね。
でも、それはこの作品の狙いのようです。

ツンデレの彼女、しかしグループの中にいて、やや孤立感のある彼女に自分の持っているスキルを教えていく主人公。ツンデレの彼女は少しずつ彼の優しさに心を開き、心を許すようになる。
あまーい物語。
そういうものを描きたかったのでしょう。

そしてだんだんとのっぴきならぬところまで彼女の心に大きな位置を占めていく主人公。それに甘えすがるヒロイン。
「それを失いたくない!」
そうヒロインが強く願うようになってから、話は一挙に展開していきます。
そうなると・・・
みかづきさんらしいというか、実はちょっと僕は苦手な部分なのですが、流血とか流血とか流血とか・・・(笑)
「嫉妬に狂った女って怖えー」と、マジで思いましたよ。

さて、読後の感想がいくつかあります。
1.この作品の主題は、後半のヤンデレの彼女が壊れる様です。
2.それを際立たせるため、前半は徹底的に甘甘なある意味典型的な展開にしています。それは意図的だと思いました。
3.この手法は、官能小説の「寝盗られモノ」に似ているような感を持ちました。また他の作品にも援用できそうです。
4.でもこの作品では、最後にヒロインは壊れきるのでなく、救われます。
5.このあたりの感性は、女性作家ならではと思います。
6.一方、僕はみかづき紅月さんの書くヒロインのよさというのは、ある種気風のよい勇ましいヒロインキャラにあると思います。
7.その観点からは、このヒロインキャラは、みかづき紅月さんのよさをちょっと減じている感があります。
8.しかし、これまでに書いていないヒロインの類型でもありますし、プロットはいろいろと他の作品にも援用できそうな形であるし、この作品はみかづき紅月さんの今後の作風の広がりに繋がる可能性があると評価できるのではないかと感じました。

最後に・・・
なんて言うのでしょうか。
ヤンデレが壊れる様は、ちょっと怖いのですけどね。
そして二人の関係のこれからを心配する気持ちにもなるのですが・・・
読後感は悪くないのですよ。
なんとも不思議な感覚が残っています。


追記
この他の「みかづき紅月」さんの作品のレビュー
放課後トゥーランドット
ぶよぶよカルテット
凸凹騎士と最強王女


(注)
実は、美少女文庫の作品は2つしか読んでいないので断言できないのですが、ハーレムものはなかったはずと思っています。ネットでは「一人一穴主義」とか書かれていますよね。
また、ライトノベルもハーレム展開は少なかったと記憶しています。
ハーレム展開になっているのは、原作が他にある「おまもりひまり」ぐらいじゃなかったかな。「放課後トゥーランドット」はサブヒロインがいますけど、ちょっと距離感が微妙です。