[]「リビドー・ガールズ 女子とエロ」を読んで(小説の評論を中心に)

わかつきひかるさんの公式ホームページの投稿「日本オタク大賞」を受けた投稿の第2弾なんですけど・・・

(参考)日本オタク大賞ガールズサイドの詳細レポブログを見つけました。


ずっと気になっていたこの本を読んでみました。

リビドー・ガールズ―女子とエロリビドー・ガールズ―女子とエロ
販売元:パルコ
発売日:2007-03
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この本に興味を持ったのは、僕自身のエロい興味からじゃないと思っているのですけどね。でもよくわからないのです。本当はそういうエロい興味から読みたいと思ったのかもしれません。

ただ、いくばくかは真に知的好奇心から読みたいと思ったといえることがあります。

僕は、わかつきひかるさんが、ティアラ文庫で本を出すと知ったときから、ティアラ文庫を読み始めました。最初は、ティアラ文庫を読んでいる人に、わかつきひかるさんの本も知ってもらいたいなと思い、ティアラ文庫のほかの作品の感想を書き始めたのですが・・・

実はとてもびっくりしたのは、それまでとても過疎っていたこのブログに読者がついたということなんですね。
メインコンテンツの「わかつきひかる」さんを応援するWikiの方は、わかつきひかるさんの公式ホームページで紹介されたこともあって、最初から読んでいただける方がいたのですが、このブログは最初、さっぱり人が来なかったのですよ。
でも、ティアラ文庫の感想は、ちょっと違っていました。

せっかく来てもらった読者さんを大事にしないと、また過疎ブログに戻るだけですしね。以来せっせと記事を書くようにしました。
そうすると、だんだんと訪れる人が増え、さらにエントリ数も増えてくると、1回の訪問あたりの閲覧記事数も増え、それでこのブログの閲覧数(PV)が増えるという良循環が生まれました。

ティアラ文庫に関連した記事というのは書評(レビュー)ばかりなのですが、どの作品の閲覧数が多いかを見てみると・・・
いくつかの例外を除き、僕がこの小説エロいなあと思っていたものほど、閲覧数が多いという傾向がでたのです。

たぶん読者は女性のはず。
いいとか悪いとかでなく、僕は事実を見つめるのが好きなので、これはとても興味深い事実でした。
それ以来、女性の持つ性的好奇心について、本音レベルで、でもまじめに扱っている本・サイトを探していました。

そういうわけでずっとこの本が気になっていたのですね。


前フリが長かったですが、この本は何人かのライターさんの対談と記事のオムニバス構成になっています。

僕が興味を持った記事は次の2つでした。
「少女たちは欲情する−−エッチ系少女マンガの現在」 堀越英美
「この世に残された最後の楽園はボーイズラブだぜ、ベイベー」 金巻ともこ

では以下にその記事を読んだ感想をそれぞれ書いていきます。


「少女たちは欲情する−−エッチ系少女マンガの現在」 堀越英美

これはやはり「快感フレーズ」の考察に興味を持ちました。
そういえば「快感フレーズ」については、わかつきひかるさんもホームページに記事を書いていますよね。
「快感フレーズ」女の子向けの美少女文庫
わかつきひかるさんらしい感想だなと思います。
特に・・・
(引用はじめ)
誰かを縁の下で支えるよりも、女の子自身が主役になって活躍する話を読みたい。
自分の未来を切り開くのは、偶然でもなく男でもなく、自分自身の努力であってほしいのです。
(引用おわり)
僕も同感なんですよね。「自分の選択で、自分の努力によって、前に進む」 男性であろうと女性であろうと、そうあってほしいと思いますし、僕はそうありたいと常に思っています。

ところで、この「リビドーガールズ」の中の説明では、「快感フレーズ」はどう説明しているでしょうか。

(引用はじめ)
小中学生対象とは思えぬ性描写の多さもさることながら、荒唐無稽きわまりないストーリーも話題を呼ぶ理由の一つになっている。普通の女の子が出会い頭にスーパーイケメンに押し倒され、なぜか真実の愛が芽生えて結ばれるというのが王道パターン。80年代に死に絶えた白馬の王子様がレイパーとなって蘇生したかのようである。
(引用おわり)

小中学生向けの雑誌にこのような性的描写があるべきかという点はこの投稿の主題ではありません。(注)
ティアラ文庫を読んでいるときにも感じたのですが、「なぜ最初はレイプ(もどき)なんだろう?」という疑問が生じたのですね。なぜ合意の上のセックスではないのでしょう。そしてこれがなぜ少女たちに受けたのでしょう?

同じ記事の「快感フレーズ」の説明に次の文があります。
(引用はじめ)
ベタ、ご都合主義という批判を恐れず「いろんなイケメン権力者に欲望されたい!(でもエッチは本命とだけ★)」「とりわけ本命には命がけで愛されたい!」という処女の初期衝動のままに・・・(以下略)
(引用おわり)

僕は男性だから、性別を逆に考えるとよく理解できそうです。

ベタ、ご都合主義という批判を恐れず「いろんなイケメン権力者 美少女に欲望されたい!(でもエッチは本命とだけ★ エッチは全員とやっちゃいたい!)」「とりわけ本命には命がけで愛されたい! 本命とか決めずにみんなからもてはやされたい」 という処女の初期衝動 男の本音のままに・・・(以下略)

こうやって男女入れ替えると、男性向けの官能小説の一ジャンルの説明になるじゃないですか(笑) わかつきひかるさんが、「快感フレーズ」は女性向けのポルノだと指摘する所以ですよね。そして、男性の性的願望のトンチキさに比べれば、女性の方が奥ゆかしい願望に思えます。

レイプについては次のように指摘しています。

(引用はじめ)
昭和期のような抑圧はないものの、男同士のようにオナニー話に明け暮れるほどには解放されていない少女たちにとって、エッチ系少女マンガは「こんなトンチキなことを考えているのは自分だけかもしれない」という不安を緩和する心強いメディアなのかもしれない。問題視されるところのレイプ(未遂)シーンの多さも、「強引に押し倒されたから仕方なく……」という言い訳がないと性交シーンに感情移入できない少女たちの奥ゆかしい性欲の発露とみれば、過激というのもはばかられるほどだ。
(引用おわり)

そうなのか・・・
確かに、あらすじを読む限り、女性の願望(愛されることと成功すること)を満たし、常に守る白馬の騎士である相手役に、読者は抱かれたいと妄想するけれど、それでも自分の妄想に言い訳が必要なんだ。なるほど、そうだったのか、ティアラ文庫でも最初がレイプもどきなものが多いのはそういう理由だったんだと思いました。


「この世に残された最後の楽園はボーイズラブだぜ、ベイベー」 金巻ともこ

ボーイズラブを読む女性は、決して性同一性障害ではありません。普通に女性として男性が好きという嗜好を持った人だと知っています。
でも、そういう人がなぜ男性同士でセックスする小説等がすきなのでしょう? 男性としては、これが疑問なんですね。


(引用はじめ)
つまり男女のセックス描写はなまなましいんだよ! それが性的に成熟していない証拠だとののしられようとそれでも結構。たとえばエロビデオに中出しというジャンルがある。あれを安心して観ることができる女子がこの世の中にどれだけいるのかっつー話なのだ。

(中略)

男女のセックスには怨念というか血の匂いがつきまとう。無責任な中出しの終着点は堕胎でしかない。そんな無責任なセックスを臆病で貞淑な女の子たちは楽しむことができない。つまり、ほとんどの男性向けのエロ漫画を臆病で貞淑な女の子たちは楽しむことができないのだ。

(中略)

ボーイズラブの血の匂いのしなさ、は特筆すべきもので、妊娠や結婚の介在しないセックス−−いや恋愛のなんと自由でロマンティックなことか!

(中略)

現実なんていらない。マンガや小説の中でくらい夢を見させてよ。ヤマもオチも意味もなく抱き合い、ただ愛し合うことを私たちにも許して。女の子のセックスはただ抱き合うことが許されないから。愛することには必ず犠牲がつきものだから。
(引用おわり)

長く引用してしまいましたが、この記事を読んでようやく理解できた感覚があります。ボーイズラブの受けは「妊娠しない女性」だったんですね。(こう書くと、なにもわかっちゃいないと罵られそうですが・・・) そこに全く現実味がないからこそ、きれいな男の子が感じるさまを楽しめるわけなんだ・・・

男女のセックスに血の匂いがつきまとうという表現はよくわかります。
望まない相手の妊娠とか悪夢でしょうし、たとえ妊娠を望んだセックスといえ、流産だってあります。
ひどい言い方ですが、男は直接関係ないですものね。ただ女性が耐えるだけ。
楽しみのために読む小説、マンガで、そんな現実を省みたくはないでしょう。だから、ボーイズラブなんだ・・・ やっとわかりました。

これを踏まえてティアラ文庫をもう一度眺めてみると・・・
結婚する、あるいは結婚してからという話がとても多いですね。ざっと数えて全体の3分の2ぐらいの作品がそうじゃないでしょうか。
健康な男女がセックスをすれば妊娠する。その自然なことが読者である女性の負担にならないように、配慮されているのでしょう。

この世にいないほどのイケメン権力者に欲望され、強引に奪われ、無二の愛を与えられ、身も焦がれるような恋心を持ち、セックスの快感に酔う、そういった物語を女性読者は読みたがっているのだと、改めて認識しました。



(注)
僕も昔あだち充さんが連載していたとき、少女コミックを買っていましたので、かなり隔世の感があります。各地方自治体でこの雑誌を有害図書指定していますが、一方、この本の脚注によると、「第52回学校読書調査」で普段読んでいる雑誌として、少女コミックは小学6年生女子で12位、中学1年生女子で14位にランクインしているということです。
僕は晩生だったのかもしれませんが、ローティーン時代は性的なものは嫌悪というか遠ざけていました。小学校高学年から中学というのは、女性の方が成長が早いというのはよく知られたことですが、身体だけでなく心や性的なものの成長も女性の方が早いのでしょうね。