(ティアラ文庫)「プリンセス・リング」感想

プリンセス・リング 皇子と囚われた姫君 (ティアラ文庫)プリンセス・リング 皇子と囚われた姫君 (ティアラ文庫)
著者:柚原 テイル
販売元:フランス書院
発売日:2010-03-05
おすすめ度:3.0
クチコミを見る

ネタバレがあります。お気をつけ下さい。

この作品の評価はとても難しいです。
男性視点と、僕の中では最近少しずつ理解がすすみつつある女性視点では、全く正反対な評価になりました。


最初に「男性視点」から。
物語の中で起こっている出来事のキテレツさというか不自然さ、ご都合主義に耐えかねます。なんでかというと、この物語を「軍事・政略もの」の小説として読んじゃうのですね。
僕、軍事小説に限らず軍略論文も含めて、軍事関係の本は軽く100冊超の読書数を誇りますが、軍事的な常識からすると、「ありえない」出来事の連続なのですね。ですから、「男性視点」的にはちょっと物語として読むことができない水準と評価しちゃいます。お金返せのレベルですね(笑)


しかし「女性視点」では・・・
この作品は、「女性の欲望を満たす」ことに忠実に書かれていると評価します。とてもストレートです。上記の男性視点で指摘した「ご都合主義」も女性の欲望を満たすためには必要なものでした。

例えば・・・(以下、ネタバレです)

1.望まぬ相手(こいつがまたかっこ悪い、典型的ブサメンだよ!)との政略結婚の結婚式に、ヒーローが颯爽と現れヒロインを強奪します。
強引な白馬に乗った王子様ですね。

2.相手は不器用で強引なイケメン権力者です!
でも性格は純情で国と国民に忠実な男で、さらに軍事の天才(注)
美貌、体躯、精力、富、リーダーシップ、権力などを兼ね備えたこの世のものとは思えない(だって小説だし)男です。

3.でもそんな完璧男にも、ヒロインしかしらない弱さが・・・
そして、それを見抜いた賢明なヒロインに、とことん執着してきます。他の女の匂いは全くありません。ただあるのはヒロインへの愛だけなんですよ。ヒロインは鈍くて気付かないのですけどね。

4.でも不器用なやつなので、それ(愛)を性愛としてしか表現できません。でも精力的でとても上手なので、ヒロインは翻弄され、めくるめく官能に身を焦がします。

5.そんな不器用な男にヒロインは愛の紡ぎ方を教えていきます。
女性の扱い方を少しずつ教え、そんな男がヒロイン好みに変わっていくのですね。

6.もうひとりいる魅力的な男性に心が奪われながらも、ヒロインは正しい相手を賢くも見抜きます。

7.そしてヒロインはいつしか窮地に。でもそんな窮地に死を恐れずヒーローはやってきます。そしてヒロインを守って大立ち回り。敵を撃退します。

8.でも傷ついたヒーローは、逆に窮地に。
そんなとき、ヒロインは立ち上がり、愛する男性のため懸命の働きをし、救います。愛する男性のためになにもかも捨て戦い、そして成功します。

9.二人は真に愛し合います。心と体が繋がって、めくるめく快感が。
二人は皆から祝福され結婚し、おなかの中には愛の結晶が生まれます。


いやあ、書いていて恥ずかしくなるのですけどね。女性の夢が詰まっている小説だといえるでしょう。
男性視点を持ち合わせている女性には、ちょっと辛いかもしれませんが、乙女心満載な人には、この小説を読んで幸せな気分になるのじゃないかなと思います。
最後に、性的な描写が気になりますか?
あまりそれが好きでないという人には、おすすめできませんよ。だってティアラ文庫ですものね。
それが濃い人がいいという場合には、どうなんでしょう。なんていうかな、エロはほどよい感じというか、やや濃い目という評価です。





(注)
えーと軍ヲタ視点だと、軍事の天才には到底思えないのはご愛嬌ということで・・・(汗)



追記
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜ ひご覧ください。