(ティアラ文庫)「マーメイド・オークション」感想

マーメイド・オークション 伯爵が愛した人魚姫 (ティアラ文庫)マーメイド・オークション 伯爵が愛した人魚姫 (ティアラ文庫)
著者:斎王 ことり
販売元:フランス書院
発売日:2010-03-05
おすすめ度:3.5
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斎王ことりさんの作品は、前作のものが「ちょっとヒロイン痛そう」と感じたので、今度はどうかなと思ってみましたが、これはそんなシーンは全くありませんでした。
あとがきにもかいていましたけど、甘〜い物語を書いたということ、なるほど甘甘な感じです。

人間の世界に好奇心を持った人魚が、人間に捕らわれ、売られ、それを買った人物に翻弄されながら愛しあうようになる、これが全体のストーリーですね。

お相手役の男性キャラは、主に二人。伯爵グリフォンとオルフェス王子。
嵐の夜に避難した洞窟で会った男性に会いたいという一心で、とらわれの身になったシェラザードは、グリフォンにオークションで買われます。
グリフォンは乱暴にシェラザードを扱います。
でもその中に人魚に執着する心を見つけ、シェラザードの心はざわめくという感じなんですよ。でもそこのとても紳士なオルフェス王子がやってきて・・・
さて、洞窟でシェラザードが会った男性はどちらでしょう?

まあ、そんな複雑なストーリーじゃないですから、こう書くとわかっちゃうと思います。グリフォンは、だんだんとシェラザードに惹かれ、優しく接するようになるのですが、一方、オルフェス王子に対する遠慮もあって、その気持ちをシェラザードに伝えることには躊躇しています。

そんな中、オルフェス王子の命を狙う陰謀に護衛役であるグリフォンとシェラザードが巻き込まれ、いろんな出来事が起こるのですが、シェラザードも自分の気持ちに気づき、献身的にグリフォンに接する、こういったクライマックスになっていきます。

波乱と愛情、とても乙女ちっくなお話ですよね。
そう思います。


・・・・・・・・
・・・
・・・・・えーと・・・

なんだか、棒読み感想になっちゃいましたね。
僕の文章が下手なせいだと思いますが・・・

実は、この作品を読みながら、いまひとつ物語に入り込めない僕がいました。
なぜなんだろう?
考え込むことしばし・・・

一晩寝て、起きて、会社に出て、暇になって思い出して、ようやくわかったことは、僕はお相手役のグリフォンの人物像を頭の中で作り上げることに失敗したということです。
だから、どこか観察的な視点でしかこの物語を読めなかった。だから物語に入り込めなかった。そういうことです。

理由もわかりました。(以下ネタバレです。注意ください)

1.洞窟の中で紳士にシェラザードに優しく接し、キスをした男性
2.オークションでシェラザードを競り落とし、その後監禁しながら冷酷に調査する男性
3.オルフェス王子に忠誠を誓い、献身的に尽くす騎士
4.足が生え、オルフェス王子が現れてからはシェラザードに紳士的に接する男性
5.オルフェス王子を狙う陰謀を探るため、シェラザードと一緒に行動しシェラザードが自主的な行動をとるのを見守る寛容な騎士
6.しかし陰謀を明らかにする前に嫉妬にがまんできずシェラザードを救うべく大立ち回りする男性
7.しかし最後にはシェラザードに何もいわずオルフェス王子の身代わりとなって戦い、致命傷を受ける忠義の騎士

これらが「同一人物」に思えなかったようです。


どうなんでしょうね。
僕の読み方が悪かったのかなあ。
頭で、つまり理屈で理解したのは、とても乙女チックな物語で、ストーリーも悪くないし、最後のクライマックスはとても感動的な物語なんですよ。
ヒロインのシェラザードはとてもいいんです。

でもね。なにか入り込めない。
もやもやっとした感じが読後に残る、そういった作品でした。



追記
わかつきひかる」さんの「王子が恋する女神姫〜薔薇と陰謀の舞踏会〜」の記事(感想など)を書いています。ページはこちらです。
また、そちらには、これまで書いた既刊のティアラ文庫の感想へのリンクもはっています。
ぜ ひご覧ください。