わかつきひかる作品の昨年を振り返る(6)「王子が恋した女神姫 薔薇と陰謀の舞踏会」

わかつきひかるさんの初めての女性向け小説です。
わかつきひかるさんの公式ホームページのこの投稿で、わかつきひかるさんが、「ティアラ文庫で出版しますから、よろしくね」と行間に書いているような気がしましたし、乙女向け小説ってどんなんだろ?って純粋な興味がありましたから、まずは6月刊行分のうち1冊読んでみました。
剛しいらさんの「華の皇宮物語」です。感想を一言でいうと、「手堅い作家さんだな」ですね。

思い返せば、中学時代、愛読書は「少女フレンド」、そして時々「マーガレット」、陸奥A子さんが好きになってからは「りぼん」も・・・(笑)
高校の途中ぐらいまで読んでいましたっけ。
面白かったんですよ。
マーガレットは「エリート狂走曲」(弓月光さん)が大好きでって、あれ? 名前似てない? ゆづきひかる、わかつきひかる。ま、弓月さん男だけど。
フレンドは、大和和紀さんの「はいからさんが通る」とか庄司陽子さんの「生徒諸君」とか面白かったですね〜
このころ、ほんとに少女マンガが新しかったんですよ。
高校時代は、少女マンガは吉田まゆみさんの「れもん白書」が好きでしたね(mimi愛読していましたw)。
大学時代は、氷室冴子さんのファンになったので、コバルト文庫を読んでおりまして・・・
いやあ、中学から大学までは、乙女向け一色じゃないか!! (笑)
(注)


そこで、ティアラ文庫、発行された全巻読みました!
一言感想・・・ 「これは昔読んだ乙女系とは全く違うぞ」

いえ、80年代にはレディコミもずいぶん読んでいたのですけどね(笑)
(男性向けエロマンガは、今に至るまで全く読んだことがないくせにね)
当時から性描写は相当過激だったとは思うのですけど、僕が読んだレディコミは、たいていOLが主人公でした。

まあ、女性向けのって、80年代後半から密やかにエロいの多いですよね。そして、ティアラ文庫も、ほとんどポルノ小説ばりの(2chあたりではエロ番長と呼ばれている)ものがわりと売れているようです。
ただ、いわゆる学園ものがあまりないですよね。ファンタジーが主体です。そして、働く女性が主人公の作品がないんですよ。
編集方針なんでしょうね。興味がつきないです。

あ、ちなみに、女性向けの小説をはじめて読んだ男性の方の感想で、ティアラ文庫の性描写にびっくりされている方もいますけど、レディコミとかティーンズコミックの性描写って、全部ではないのですが、わりとすごいものもあるんですよと指摘しておきます。
レディコミとか、もう20年以上売られていますし、お好きな人はティーンズのころから買っているようですよ。
(性描写が軽めものも多いのですけどね)




王子が恋した女神姫―薔薇と陰謀の舞踏会 (ティアラ文庫)王子が恋した女神姫―薔薇と陰謀の舞踏会 (ティアラ文庫)
著者:わかつき ひかる
販売元:フランス書院
発売日:2009-09-03
おすすめ度:2.0
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さて、前置きはこれぐらいにして、王子が恋した女神姫で僕が印象的だなと思ったシーンを3つほどピックアップします。


横に転がって逃げようとしたとき、腰をぐっと持たれ、引き寄せられた。
犯されるのだ。動物のように。
「娘なんてものはなぁ、ヤッちまったらこっちのものだ。お前をオレの奴隷にしてやる。はははっ、調教してやるよっ。お前を縛ってヤリまくって、オレ以外見えないようにしてやる!!」
ゾッとした。

レイプのシーンです。この後、主人公のマリエは力が覚醒し、レイプ犯を殺すのですが、どうですか?
よくも悪くも、このシーンはインパクトがあるでしょうね。物語的には、力の覚醒のきっかけとして重要な場面です。
実は20年ほど前に僕が読んだレディコミには、レイプシーンってわりとあったんですよ。
でもこの作品のレイプシーンについては、ネットでの感想は否定論ばかりですよね。でもまあ、レイプシーンがよいなんて感想はネットにはまず書けない(さすがに僕もネットには書けません)ので、こういう結果になるのは見えていますが、実際、読んだ人はどういう感想だったのでしょうね。
僕には、このシーン、わかつきさんはわりと淡白に書いているように思えたのですけどね。


ジルは思った。
−−どうせ手に入らないものなら、すべてを壊してあげる。姫様の大事なものを全部。
ガナグアなど、わけのわからぬ宗教など信奉してはいない。王弟殿下のような、酷薄そうな男など、信用してはいけない。
王弟殿下の命令通り、王に毒を飲ませ、自身は仮死状態になる薬を呷った。
ジルはもう死んだのだ。リラという偽名を名乗り、王弟殿下の命令通り動きながら、それでもジルはダーラントのことを想っていた。

ジルはダーラントが好きです。しかし、仕える王女様とダーラントは結ばれました。ジルは嫉妬に狂い裏切り、破壊を願います。
あとがきに・・・

××(あとがきから読む読者さんのために伏せ字)の愚かな裏切りを書くの、楽しかったです。私、××の気持ち、わかっちゃうんですよね。こういう愚かさは私にもあります。

って書いていましてね。嫉妬とは、かくも女性を狂わせるということ、そしてその気持ちがわかるというわかつきさん、ただ単純に、そうなのか・・・と感じました。このシーンをピックアップした理由はただそれだけですが、でも印象に残っています。


レディシアの感情が、マリエの感情に重なる。

同調した。

その瞬間、レティシアはマリエで、マリエはレティシアだった。
ふたりの体を、水の塊が取りまいていく。ふたりの体が空中に浮かんだ。
ふたりの体は、水球に取り囲まれて空中に浮かんでいた。ふたりの王女は背中合わせに水球の中に立つ。青くかがやく水球に、神々しいまでに美しいふたりの王女が立っている。

クライマックスですね。
ふたりの王女は力をあわせ、同調し、敵に立ち向かいます。
自国の民が殺され、犯される。それを許しません。
美しく、静かで、激烈で、血なまぐさいシーンです。
二つの相反する雰囲気を併せ持った、いいシーンだなと思いましたので、このシーンをピックアップしました。



それでは、「わかつきひかる」さんを応援するWiki「王子が恋した女神姫 薔薇と陰謀の舞踏会」の紹介ページはこちらです。
ぜひご覧ください。




(注)
さすがに大学以降は、サンデーとかスピリッツとか男性向けの雑誌を読むようになって、氷室さんのコバルト文庫を除いて女性向けを読まなくなりました。あ、でも時々ハーレクインは買っていたかも、それにレディコミも(汗)
好きなマンガ家といえば、高橋留美子さんだったしなあ。

今でも、二宮ひかるさん(お! またひかるだ)とか、さんりようこさんとか、女性マンガ家のマンガ単行本を買っています。ライトノベルで好きな作品(作家さん)といえば、「とらドラ!」(竹宮ゆゆこさん)、「GOSICK」(桜庭一樹さん)、「ぶよぶよカルテット」(みかづき紅月さん)。
それになにより、わかつきひかるさんの作品が好きだし・・・
うーむ、女性作家ばかりじゃないかぁぁぁ。(笑)