わかつきひかる作品の昨年を振り返る(8)「天使はいつも忙しい」

わかつきひかるさんと言えばエロ。
それはそうなんですけどね。以前、ちょっとコメントに書いたことがあるのですが、僕はわかつきさん(ここで名前を省くのがポイント!)って、四色作家だと思っています。(なんじゃそれ?)

四色のイメージは次のような感じです。

最初の色は、スカーレット 緋色と訳されることも多いのですが、あまりくすんでいない色をイメージしています。
これは、若月凛名義で出している大人向けの官能小説のイメージですね。微妙な時代に生きる強く輝く女性を主人公にした小説が持ち味で、その主人公の女性を色に例えてみました。

二つ目の色は、ショッキングピンク 強いピンクです。
これは、美少女文庫のイメージですね。

三つ目の色は、肌色
これはHJ文庫などの肌色路線ライトノベルをイメージしているというか、まんまじゃん(笑)

そして最後の色は、ノーブルホワイト
エロなしの純愛ものをイメージしています。

四色旗そんなわけで四色旗を作ってみました(笑)
真ん中に、ジュブナイルポルノを現すピンクを配置して、地色に三色を使いました。




さて、この「天使はいつも忙しい」は、僕のイメージでは、ノーブルホワイトの代表作ですね。今度出版される「そだてて! まりあ!」もエロなしということですから、ノーブルホワイトのものが増えそうで、個人的にはとてもうれしいです。


天使はいつも忙しい (メガミ文庫 39)天使はいつも忙しい (メガミ文庫 39)
著者:わかつき ひかる
販売元:学習研究社
発売日:2009-09-29
クチコミを見る

そんなわけで、僕はこの作品が大好きなのですが、特に印象に残ったところをピックアップしてみます。


−−あっ、私、クリップを……。は、外さなくっちゃっ……。大変なことになっちゃうっ!
電車がガタンと大きく揺れた。沢田くんがつり革をつかもうとして左手をあげる。その瞬間、私のスカートがばーっとめくりあがった。
「きゃー!!」

えと、一ノ瀬ありさちゃん、好みのキャラなんです(笑)
それと秘密を知られた沢田くんを下僕にするために、スカートと彼の制服の袖をリボンでくっつけるって・・・
かわいいよね〜


アイは腕まくりして座り直した。
さっきまでのけだるさがウソのように、瞳をキラキラさせながら、タイミングを見計らってメダルを投入する。
だが、なかなかポケットに入らない。
「あっ、入ったと思ったのにーっ」
「惜しかったね。小鳥さん」
すると今度は雅彦の投入したメダルがストンとポケットに落ち、また絵柄が回りはじめた。
「きゃーっ」
アイは両手を口に当てて立ち上がった。
「続けて入れたほうがいいよ。スロットが回っている間、ずっとポケットが開いているだろ」
「そっかっ!! すごいっ。知らなかったっ!!」
アイは手に汗を握りながらメダルを投入した。
雅彦が投入したのと、アイのぶんと、続けて二つメダルがポケットに入った。
「きゃっ、入った。入ったわっ!!」

長い引用ですが、このシーンは、天使の小鳥アイが阿坂くんとゲームセンターでメダルゲームをやっているシーンです。
アイの楽しそうな様子がとてもいいですね。
リアルな感じもうけますよね。
僕には、このシーン、アイじゃなくて、わかつきひかるさんが楽しそうにゲームをしているように思えたのですよね。そんなわけで、とても印象に残っています。


「小鳥さん……」
雅彦が言った。
「アイって呼んで。この名前、気に入っているの」
Iという名前は、便宜上割り振られた記号でしかない。
だが、愛なんて、響きがかわいく、ステキな名前ではないか。
天使から人間になった自分にぴったりだ。
「阿坂くん、私、さっきの答え、まだ言ってなかったよね?」
「うん。でも、もう小鳥さんから、答えを聞かせてもらった気がする」
「私に言わせて」
アイは雅彦の背中に回した手はそのままで、彼の目を見た。
そして、はっきりした口調で言った。

「私は阿坂くんが好きです」

天使のアイは、天界に戻ることでなく、人間として雅彦と一緒に生きることを選択しました。そして、雅彦からの告白に答えます。
はっきりと。
僕は、わかつきひかるさんが書く、女の子の、足を地につけて力強く生きる様が大好きなんですね。生きることは、なにかを捨て、なにかを選ぶことの繰り返し。人の意見でなく、自分で決める。わかつきひかる作品に出てくる女の子たちは、皆しなやかで意思を持っていますよね。
そしてそれを象徴的に示すシーンがとても好きです。
だからこのシーンを選びました。



今年は、四色バランスよく出版されるようですね。
若月凛作品のむせ返る様な女の色香も魅力的ですし、この作品のような純愛ものの清楚でかわいらしい女の子も魅力的で好きです。
これまで赤と白は少なめだっただけに、今から楽しみにしています。



それでは、「わかつきひかる」さんを応援するWiki「天使はいつも忙しい」の紹介ページはこちらです。